Anker 735 Charger (GaNPrime 65W) を購入したのでレビューしてみる
カバンに入れて持ち歩くモバイル充電器がほしいなと思い、Anker 735 Charger (GaNPrime 65W) を購入しました。先月オープンしたばかりのAnker Store 八重洲にてオープン記念の10%オフでの購入です。
選んだ理由
もともとカバンに入れて持ち歩くモバイル充電器がほしいなと思っていました。要件としては
- Type-Cが2ポート以上あること
- 単ポートで60W以上出力できること
- Type-Aはあったら嬉しい *1
がありました。この条件を満たしていて、各種レビューにて怪しくないことが確認されている製品をピックアップしたところ
Anker PowerPort III 3-Port 65W Podwww.ankerjapan.com
Anker 735 Charger (GaNPrime 65W)www.ankerjapan.com
の2つが見えてきました。どちらを買っても良かったのですが、せっかくならより新しい製品を買ってみようと思い、Anker 735 Charger (GaNPrime 65W) を購入しました。
特徴
Anker 735 Chargerは2022年8月に発売されたばかりの製品で、特徴としては「GaNPrime」という新技術が搭載されていることが挙げられます。GaNPrimeは、電源ICや回路設計を見直すことで、従来の窒化ガリウム採用の製品に比べさらに高出力・小型化を実現した技術だそうです。加えて、Dynamic Power Distributionと呼ばれる技術を採用しており、各ポートが必要とする電力を動的に検知して配分するようになっているそうです。さらにActiveShield 2.0という技術も採用され、充電器本体の温度が上昇したときは負荷を下げて過度な温度上昇を防ぐ仕組みがさらに強化されています。高出力・高効率・高安全が盛り込まれたAnkerのフラグシップ技術ということでしょう。
フラグシップだけあって、GaNPrime採用製品の価格は高めです。今回購入したAnker 735 Chargerの定価は7,990円で、さらに高出力のものだと1万円を超えるものもあります。昔のAnker製品はそこそこ安いイメージがありましたが、最近は競合する企業も多いからか、プレミアム路線にシフトしているのかもしれません。
外観
しっかりとした箱に入っていて、プレミアム路線をアピールしています。
裏のシールは最近のApple製品のパ○リっぽい感じです。
中に入っているのは製品と簡単な説明書だけです。
私が持っているAnker PowerPort Atom PD 2という充電器と比べてみました。Anker PowerPort Atom PD 2は最大60W出力でType-Cポートを2つ備えています。Anker 735 Chargerのほうが出力も大きくポート数も多いのにずっと小さいです。重さもカタログ上は40g以上軽くなっています。ただ、実際に手で持ってみるとそこまでの差は感じません。とはいえこの小ささは素晴らしい。Anker PowerPort Atom PD 2は2019年9月発売の製品なので、たった3年しか変わらないのですが、技術の進歩を感じます。
プラグ側に入出力の情報が書かれています。公式サイトにも外箱にもプラグ部分にもPPS対応が明記されていませんが、本製品はPPSにも対応しています。PPS対応をアピールしない理由は謎です。
組み合わせを試してみる
色々な組み合わせでどのような出力が得られるのか試してみました。私はワットチェッカーを持っていないので、Macの「システム情報」から見れる電源の入力電力を観測して、どのような出力が行われているのか推測することとしました。今回使用した機材は以下のとおりです:
- MacBook Pro (13inch) …… 電池残量69%程度
- Xperia 1 III (スマホ) …… 電池残量69%程度
- Apple Watch …… 電池残量99%程度
これを様々な組み合わせで充電してみました。
組み合わせ | Macで観測した出力 |
---|---|
Type-C 1ポートのみ使用 (Macを充電) | どちらを使っても65W |
Type-C 2ポートを使用 (Macとスマートフォンを充電) | 上ポートは33W 下ポートは32W |
Type-C上ポートとType-Aポートを使用 (MacとApple Watchを充電) | Type-Cポートは41W |
Type-C下ポートとType-Aポートを使用 (MacとApple Watchを充電) | Type-Cポートは15W |
同じポート数・同じ最大出力の前モデルである「Anker PowerPort III 3-port 65W Pod」と比較すると、
- Type-C 2ポート使用時、Anker 735 Chargerは上ポートで33W 下ポートで32Wを出力しているが、Anker PowerPort III 3-port 65W Podは上ポートで45W 下ポートで20Wを出力する仕様
- Type-C上ポートとType-Aの使用時、Anker 735 Chargerは上ポートで41W出力するが、Anker PowerPort III 3-port 65W Podは40Wを出力する仕様 *2
- Type-C下ポートとType-Aの使用時、Anker 735 Chargerは下ポートで15W出力するが、Anker PowerPort III 3-port 65W Podは12Wを出力する仕様
Type-C 2ポート使用時にAnker PowerPort III 3-port 65W Podと比べると、両方のポートにほぼ等分に電力が配分されているのが特徴的です。Macとスマホを充電するときはMacに40Wぐらい割り振って、スマホには20Wくらいでいいような気がするのですが、Dynamic Power Distributionってそこまで賢くないのでしょうか。もしかしてMacの電池残量をうんと減らしたら結果が変わるかと思い、Macの電池残量を0%、スマホの電池残量を80%ぐらいにして試してみたところ変化はありませんでした。もしかしたら細かく制御されるパターンもあるのかもしれませんが、Dynamic Power Distributionは期待よりは大したことがないのでしょうか?
充電速度を比較する
Dynamic Power Distributionの実力が気になったので、続いて私が持っているAnker PowerPort Atom PD 2とAnker 735 ChargerそれぞれでMacとiPhoneを0%から充電したときにどの程度早く充電できるかを調べてみました。Anker PowerPort Atom PD 2は2ポートを使用すると30Wずつ出力で、先程検証したときはAnker 735 Chargerが33Wと32W出力だったので、理屈上はわずかにAnker 735 Chargerのほうが充電が早い程度のはずです。これがより顕著に差が出るのであれば、実はより細かく出力電力が最適化されており、Dynamic Power Distributionの効果があると考えられます。
まずAnker PowerPort Atom PD 2の結果です。
経過時間 | Mac | iPhone |
---|---|---|
10分 | 5% | 17% |
20分 | 10% | 29% |
30分 | 15% | 45% |
40分 | 20% | 60% |
50分 | 25% | 74% |
60分 | 30% | 80% |
70分 | 35% | 86% |
80分 | 41% | 93% |
90分 | 46% | 97% |
100分 | 51% | 100% |
110分 | 56% | 100% |
120分 | 62% | 100% |
130分 | 67% | 100% |
140分 | 72% | 100% |
150分 | 77% | 100% |
160分 | 82% | 100% |
170分 | 83% | 100% |
180分 | 89% | 100% |
190分 | 93% | 100% |
200分 | 96% | 100% |
210分 | 97% | 100% |
220分 | 100% | 100% |
続いてAnker 735 Chargerの結果です。
経過時間 | Mac | iPhone |
---|---|---|
10分 | 6% | 16% |
20分 | 14% | 35% |
30分 | 21% | 51% |
40分 | 30% | 67% |
50分 | 39% | 78% |
60分 | 48% | 83% |
70分 | 56% | 90% |
80分 | 65% | 95% |
90分 | 73% | 99% |
100分 | 80% | 100% |
110分 | 88% | 100% |
120分 | 92% | 100% |
130分 | 95% | 100% |
140分 | 97% | 100% |
150分 | 100% | 100% |
計測に影響を与えない程度で少しだけMacへの入力電力を見てみましたが、計測開始の初期段階で37W入力、その後iPhoneの充電が進むと45W、50Wと入力が増えているのを確認しました。これはDynamic Power Distributionが働いているのでしょう。ポートの出力が少なくとも50Wにまで増えることを確認できたのは収穫でした。
結果として、iPhoneの充電速度はさして変わらないものの、Macの充電速度は大きく向上していることがわかりました。Dynamic Power Distributionは効果があるといって良さそうです。
総評
充電器としての出来自体は良いです。筐体の質感も良いですし、充電もそつなくこなしてくれます。発熱はType-C 2ポートをフル稼働させるとそれなりにする印象です。Anker PowerPort Atom PD 2と比べても発熱が目に見えて抑えられている感じはしませんでした。とはいえ触れないほどではないので、制御はきちんとされてそうですし、この小ささでありながら発熱は抑えられているという捉え方もできるとは思います。
Dynamic Power Distributionは、最初は効いているのかよくわからなかったですが、色々試したところ確かに電力出力の制御が動的に行われていることが確認できました *3。今回は比較しませんでしたが、従来製品のAnker PowerPort III 3-port 65W PodでType-C 2ポート稼働だとどう頑張っても最大で45Wまでしか出力できないので、その範囲を超えて出力を変えられるのは本製品の強みと言ってよいでしょう。ここに1,000円の価値を見いだせるかは人によるかなとは思いますが。
ケーブルも購入した
あわせて持ち運び用のケーブルも購入しました。
左がUSB Type-CとLightningのケーブルで、Belkin BOOST↑CHARGE Flexという製品です *4。右がType-CとType-C同士のケーブルで、Anker PowerLine III Flowという製品です。長さはそれぞれ1mと0.9mです。持ち運びを考えていずれも短めにしました。
どちらの製品も、外装にシリコンを採用することで、絡みにくくく取り回しやすいことを売りにしたケーブルです。Anker PowerLine III FlowにもType-CとLightningの組み合わせがありますが、Belkinのほうが安いのでこちらにしました。BelkinってApple Storeで扱っているからか高いイメージがありますけど、実際には結構安価な製品もあって、質も悪くないので好印象なブランドです。
いずれもUSBケーブルとしては若干太めですが、その太さを感じさせないほどしなやかでよく曲がるのが便利。ポーチにもすっと入ります。表面がサラサラした素材なので、引っ掛かりがなく出し入れしやすいんですよね。どちらもおすすめのケーブルです。
*1:手持ちのApple Watchの充電ケーブルがApple純正のType-Aのものしかないのです。Type-Cの短いケーブルがかつて販売されてたそうなんですが、いつの間にか終売になっていました。なぜこんなことをするのか……
*2:これは誤差の範囲かもしれません
*3:実験を通した推測として、Dynamic Power Distributionが働くにはしばらく充電を続けることが必要なようです。電流電圧をしばらく計測してそれをならした上で計算をしているのでしょう
*4:ヨドバシで購入したら箱がめっちゃ汚かったです。ケーブルの箱に美しさは求めていないですが、管理がどうなっているのかは気になります