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Kohaku Lab

ガジェットとカードが好きな人のブログです。

SIMロック解除義務化は本当に喜ばしいことなのか

結構昔の話になるけども、総務省が2015年より携帯電話キャリアに対してSIMロック解除を義務化することを決定して、携帯電話好きの間では話題となりました。今更では有りますが、個人的なSIMロック解除義務化についての意見を書きたいと思います。

SIMロック解除を義務化へ 2015年度にも実施の方針 総務省

総務省SIMロックに対する考え方

総務省は、「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」というワーキンググループにて、携帯電話の契約方式について携帯電話キャリア有識者を招いて議論を行ってきました。その中間とりまとめはネット上で公開されていて、そこでも「SIMロックは原則解除すべき」という結論が出されています。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000306312.pdf

この中間とりまとめによれば、

  • SIMロック携帯電話キャリアが利用者を囲い込むために行っているものである
  • SIMロックのせいで利用者はMNPの際に新しく端末を購入する必要があり、その端末代負担を軽減するために過度なキャッシュバックが行われている
  • MNP利用者に対する過度なキャッシュバックは長期利用者との不公平感を増大させている
  • SIMロックの解除をすれば、端末を使いまわせるようになるので、過度なキャッシュバックはなくなる

という論理展開になっています。

SIMロックのメリットが薄れてきているとは思う

まず、これまで日本の携帯電話キャリアが長きにわたってSIMロックを行ってきた根拠が徐々に薄れてきているのは事実だと思います。SIMロックは、何も利用者にとって不利なことばかりではなくて、有利なことも有ります。それは、ある端末がひとつのキャリアでしか使えないという前提があるからこそできる、端末とキャリアが強力なタッグを組んだサービスの提供です。

ドコモが提供しているiモードというサービスが有ります。意外と知られていませんが、これは世界初の携帯電話インターネット接続サービスで、ドコモが用意した箱庭の中だけとはいえ、発表当時としては先進的なインターネットによるサービスを受けることが出来ました。このようなサービスを提供できてきたのは、ドコモと端末提供会社が強力に結びつき、ドコモの指導のもと端末が開発され、ドコモでだけ使えるようにロックされた端末を販売するというスタイルをとったからです。ドコモでしか使えないようにロックされた端末だからこそ、ドコモのサービスに特化した端末を開発することが出来たといえます。

しかし、今はスマートフォンが普及し、キャリア独自のサービスに頼らなくても、十分にスマートフォンとしての機能は利用できるようになりました。キャリアメールも、LINEやフリーメールサービスの普及に伴い、若年層を中心にもはや過去のものになりつつ有ります。私自身も、たくさんのスマートフォンを所有していますが、キャリア独自のサービスを利用することはほとんどありません。

このような変化が起きると、携帯電話キャリアがわざわざ端末の開発に介入し、特定の携帯電話キャリアに特化した端末を開発するメリットは小さくなってきます。どのキャリアでも使える統一仕様の端末を大量生産したほうが生産コストは安くなりますし、特定のキャリアのサービスを必要とする人が減ってきている以上、そこにコストを掛けてもリターンは大きくないからです。

結果として、SIMロックによって得られる利点が小さくなり、相対的にSIMロックによる不利益が大きく見えてきたので、総務省SIMロックを目の敵にするようになったのだと思います。

SIMロックを解除したところで流動性が上がるかは疑問

中間とりまとめによれば、SIMロックによって顧客の囲い込みが行われ、結果として顧客の流動性が損なわれており、多額のMNPキャッシュバックにつながっている、という主張がなされています。しかし私は、かといってSIMロックを解除したところで顧客の流動性が上がるとは思えない、と考えています。

まず、各キャリアが使用する周波数帯がバラバラである、という問題が有ります。LTEに関して言えば、ドコモとSoftbankはBand 1をメインで使っているけども、auはBand 1をあくまで補助としてしか使っていなくて、メインの周波数帯はBand 18になっています。一方、Band 18はドコモとSoftbankでは全く使っていない周波数帯になります。そのため、MNPしても、MNP先のキャリアで使われている周波数帯を満足に利用できず、利用者の利便性が結果として損なわれるという問題が起きる可能性があります。

この問題を解消するためには、端末製造会社が携帯電話キャリアから独立して端末を開発し、すべてのキャリアでの利用を想定した端末を開発する流れを作ることが必要だけども、中間とりまとめにはそういった話は出てきません。

また、そもそも利用者を縛っているのは、携帯電話端末の高額化なのではないか、という疑問もあります。端末が高額化したことに伴い、日本では、端末を分割で購入し、毎月の利用料金から一定の割引を受けることで、負担額を軽減するという商習慣が定着しています。この割引は、2年間にわたって行われるので、2年以内に解約して違うキャリアに乗り換えると、本来受けられるはずの割引が受けられず損することになり、結果としてユーザの乗り換えの抑止力となっています *1

中間とりまとめによれば、

また、販売奨励金によるキャッシュバックとは別に、携帯電話事業者は、新規契約・機種変更等に より特定の端末を購入することを条件として、毎月の通信料金の割引を行うことがある(月々サポー ト、毎月割、月々割等)。こうした割引により、最大で端末の割賦販売代金相当額の通信料金の割引を 受けることが可能となっている。 こうした販売奨励金や通信料金の割引は、ユーザが負担している通信料の一部が原資となっており、 キャッシュバックや通信料金の割引を受けずに毎月の通信料金を支払う利用者との関係で不公平が生 じていることが指摘されている。

と書かれていて、この種の割引がさぞかし悪いことのように書かれています。

しかし、SIMロックがかかっているいないにかかわらず、一定の条件のもとで端末代金や通信料を割り引くという施策は諸外国で普通に行われています。SIMロックフリーが義務付けられていることで有名な香港でも、2年契約を条件にiPhoneの実質0円販売は普通に行われています *2。端末価格が高い以上、多少の縛りを受け入れて安く買いたいという人達はそれなりに存在するわけで、そういった層の存在を無視して、割引を悪者扱いするのは筋違いでしょう。

つまり、この手の割引が行われるかどうかはSIMロックの有無にはそもそも依存していません。端末価格が高額化している以上、こうした一定の縛りを受け入れて端末価格の負担を小さくする道は用意されているべきですし、そうした道を用意する以上、SIMロックを解除しても、顧客の流動性が高まるとはいえないのではと思います。

加えて、日本では、長らく高機能な端末が小さな負担で販売されてきたことも有り、いまさら低価格で低スペックな端末の人気が出るとも思えません。

まとめ

私は、顧客の流動性向上の障壁になっているのは、SIMロックなんかよりも月々の割引による端末購入負担の軽減や2年縛りの施策だと考えています。しかし、これらの施策は、高額化する端末の購入にあたっての負担を軽減するなど一定の利用者への利点もあるため、一概に否定出来ないのではと思います。現に諸外国では、2年契約を前提として、端末価格の値引きが定着しつつ有ります。そういった事情を無視して、「顧客の流動性を阻害して競争を妨げているから、2年縛りや割引は害悪だ!」と言ってしまうのは、あまりに稚拙なのではと思います。

こういった施策が顧客の流動性を妨げる大きな要因である以上、SIMロックを解除したところで、特に何かが大きく変わるということもないのではと思います。ただ、携帯好きとしては、日本で販売されるすべての端末で自由にSIMが差し替えられるようになることで、いろいろ面白くなると思いますけど。

*1:これはいわゆる「2年契約」とは別物です。2年契約は、2年以内に解約すると違約金を取る代わりに基本料金を値引きするという施策を指します

*2:よく一部のメディアがSIMロックが解除されると割引がなくなるみたいなことを書いてますけど、ちゃんと調べてるんですかね